管理人 : 松浦明宏
医療学セミナー
今日は、国立仙台病院で、「アドバンスド放射線技師格取得のためのセミナー」の一環である「医療学セミナー」の「生命倫理」の講義をしてきました。

このセミナーは、日本各地で行われているもので、縁あって、私に宮城会場の生命倫理を担当する機会が与えられたわけです。

病院に到着したまではよかったのですが、担当者の方から頂いていた具体的に部屋を示した用紙を紛失してしまい、インターネットで探したものに書いてあった場所「地域医療研修センター(予定)」に行ったところ誰もおらず、しばらくうろうろしていました。

結局、国立仙台病院改め「仙台医療センター」の3階大会議室ではないかと、病院の受付の方に示唆され、ようやく会場にたどり着いたというところです。早めに出かけてよかった。普段の講義のようにぎりぎりに出かけていたら、「遅刻」していたかもしれません。

講義時間は、2時間30分とやや長かったので、それなりに準備していったつもりですが、
やはり少し時間があまりました(5分くらいですが)。
パワーポイント40枚(途中飛ばしたので実質35枚)では、私が2時間30分話すには少し足りないということがわかり、いい経験になりました。

医療学セミナーでは、生命倫理の講義の前のコマが、医療倫理となっているので、その担当講師の先生のお話の内容と私の話の内容とが重複するのではないかと心配していたのですが、医療倫理担当の先生は、医師の方で、具体的な場面でどうしたらよいかがお話の中心になり、他方、私の講義内容はどちらかと言えば倫理理論や倫理原則等を含めて、思想的背景に関するものが多かったので、その意味では、あまり重複せずに済んだのかな、と思います。

もちろん、思想的背景に関する内容を中心にするといっても、人工妊娠中絶やES細胞研究、母体保護法といった事項についての説明としてそれを行う以上、中絶や研究や法についてもそれなりに時間を割いて説明したつもりではあります。

今回の講義で触れた話題の一つに、生命倫理の概念を理解するということがあったのですが、この話題に関連して、次のように思います。
『バイオエシックス百科事典』(Encyclopedia of Bioethics)に出てくる生命倫理(バイオエシックス)の定義には、life sciences と health care という二つの領域が盛り込まれているのに、
日本では生命倫理というとlife sciences にまつわる道徳的・倫理的問題を扱う学問というイメージが強いように思います。もちろん、日本のバイオエシックス関係の教科書の中にも、ヘルスケアの領域と生命科学の領域との両方を扱っているものも多いのですが、生命倫理とは何か、と規定する段になると、生命倫理とは先端医療技術の領域で生じる倫理的問題を扱い、それ以外の医療の領域で生じる倫理問題を扱うのは医療倫理、臨床倫理だという理解が一般的のようです。実際、テキストとして指定された書物の中には、そのように書かれていました。

このあたりの概念のズレは、ささいなことのように思えるかもしれませんが、意外と重要なのかもしれません。というのも、たとえば、日本で生命倫理関係の「倫理委員会」というと、先端医療技術・研究の領域でかくかくしかじかの医学研究が倫理的に認められるかどうかを検討する、というのが一般で、医師と患者の信頼関係について「倫理委員会」で主題的に検討するということは、あったとしてもごく少数なのでしょうから。

これは、日本の生命倫理が、アメリカでバイオエシックスが生まれた時点での状況を、或る意味でそのまま反映していて、アメリカのバイオエシックスがその後多方面に渡って発達を遂げてきたのにくらべると、日本の「生命倫理」は誕生当時とあまり変わっていない、というふうにも受け取ることができるのかもしれません。

講義の最後にご質問いただいた方、お名前はここには書きませんが、
ご質問どうもありがとうございました。
by matsuura2005 | 2004-06-13 19:45
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