管理人 : 松浦明宏
卒論構想発表会
毎年、卒業論文や修士論文を書く人にその構想を発表する機会があります。私はここ何年か構想発表会の進行役をしているわけですが、特に今年の卒論生について思ったことを書いてみることにします(東北大学の哲学研究室についての話です)。

今年の学部生は、かなり熱心に卒論に取り組んでいるようで、私はただひたすら感心しています。卒論の骨子が既に出来上がっているように思える人までいましたし、(要請されたこととはいえ)きちんと発表のレジュメや原稿を作って発表会に臨んだ人が多かった。

もちろん、現役の4年生と浪人生(五年目以降の人)がいるので、今日の結果の善し悪しにこだわることはあまり意味がないでしょう。現時点で浪人の方が現役より有利であることは、大学受験の場合と同じです。大学受験の場合でも、夏休み前までの模擬試験の成績は浪人生の方が上だけれども、夏休みから秋・冬と時間が経過するにつれて、現役生が逆転するということはよくあることです。ですから、今日あまりうまく構想発表できなかった人は夏休みから頑張ればいいし、逆に、今日は比較的うまく発表できた人も慢心しないよう気をつけなければならないでしょう。今日の結果に安心してボーッとしていると、卒論提出間際になって初めて自分の議論の致命的な欠点に気がつき、気づいた時にはもう手遅れ、ということになるかもしれませんからねぇ。実際に或る程度まとまった量の文章を書いてみないとわからないということもあるのです。今日の発表会は、あくまでも卒論を実際に書くに先立っての見通しにすぎず、最終的な結果は「ゲタを履くまでわからない」ということです。

それにしても、私が卒論を書いたときくらべると、ずいぶん雰囲気がちがうなあと思いました。もちろん、私が卒論や修論を書いたときにも構想発表会はあったと思います。「あったと思う」というあやふやな書き方をしたのは、修士論文の構想発表会については今でもよく覚えているけれども、卒論の時の構想発表会についてはほとんど覚えていないからです。そもそも私は卒論の構想発表会に出席したのだろうか。考えてみると、出席したようにも思えるし、しなかったようにも思えます。ひょっとすると卒論については構想発表会そのものがなかったのかもしれません。もう10年以上も前のことなので、ほとんど忘れてしまいました。

いずれにせよ、私が卒論生だったときに、研究室全体がこれほどシステマティックに卒論指導をしていたかといえば、ひょっとするとそうではなかったのかもしれません(記憶違いならあやまります)。むしろ、自分の指導教官のところにあらかじめ卒論草稿を持っていって、その後、指定された日時に教官の部屋で何時間かにわたって個人的にコメントをもらうという形での指導が記憶に残っており、そのときに何を指導されたかは今でもはっきりと覚えています。当時は、主として個人指導の形をとっていたという印象が強いということです。

もちろん、現在でもこうした形での指導も行われていて、そうした個人指導を行うに先立って、各自に何らかの感触をつかんでおいてもらうために全体での構想発表会を行う、ということなのでしょうが、いずれにせよ、後々記憶に残るくらい本格的に卒論内容に反映されるのは、たぶん、夏休みから秋にかけて勉強した結果、自分で一応50枚なら50枚という形でまとまった文章を書いてみて、その文章について個人的に指導を受けた結果であるとは言えるでしょう。

そこで、お勧めしたいのは、次のことです。

まず、まだ方向が定まっていない人は、夏休みに入る直前か直後に一度、指導教官とコンタクトをとり、参考文献の指示・借用等を受けた上で夏休みに勉強し、卒論題目提出の前(9月末)あたりに一度夏休みの勉強の結果を報告に行く(その際、あらかじめ電話等でアポイントメントをとっておかないと、いきなり研究室に行っても教官はいないかもしれませんので、要注意です)。そして、11月下旬までに草稿(四百字詰め原稿用紙50枚程度)を作って個人指導を受け、その指導をもとに12月以降修正作業に入る、という経過をたどることです。おおよそこのような経過をたどれば、1月初旬の提出までには形になると思います。

また、今日の構想発表会でまずまずの評価を受けた人も、題目提出前には一度様子を報告し、なるべく早いうちに草稿を作ってそれを指導教官に読んでもらうことです。

どちらの場合でも、遅くとも11月中までに、最低一度は教官に草稿を読んでもらって、コメントをもらうことを強くお勧めします。というのは、論文というのは全体が有機的なつながりを持った文章なので、とりあえず出来上がったと思える草稿のうちの一カ所でもくずれると全体が崩壊してしまうということがよくあるからです。実際、私が卒論の草稿を書いた時にも、指導教官から全体の修正が必要になるようなコメントをもらいました。それが11月中旬〜下旬にかけてのことで、指導教官からその時期に草稿を持ってくるように言われたことを覚えています。おそらく教官の方でも大方の予想はついていて、だからその時期に持ってくるよう言ったのだと思います。また、或る学会誌に投稿した時にも、口頭発表の会場等で受けた指摘を考慮しているうちに、一度まとまった論文全体がばらばらになってしまい、ほとんど一から出直さなければならなくなったこともあります。

論文を実際に書いているうちに、一度まとまったと思ったものが崩壊してしまい、絶望的な気持ちになった場合でも、提出までに一ヶ月以上あればまだ何とかなります。しかし、12月に入ってから、特に、冬休み前後になって草稿を持っていき、その時点で重大な欠陥を指摘されたり自分で気がついたりした場合、修正するのは時間的にも気持ちの上でもかなり困難です。そういうことにならないように、なるべく提出期限の一ヶ月以上前に、教官に草稿を読んでもらうことをお勧めするのです。

なお、二年生、三年生の中で今日の発表会に参加した人がかなりいました。その人たちは、構想発表会の時点でどの程度まで研究を進めておくとよいのか、何をすればよいのか、目安がだいたいわかったのではないでしょうか。今日の発表会で「このまま(研究を)進めてくれればいい」と言われた人たちの発表を目標にして、来年以降に備えてください。また、参加できなかった人も構想発表会のレジュメを手に入れて見るなどしてみれば、おおよそのところはわかると思います。いずれにせよ、卒業論文のことを早くから意識しておくことは、これから自分がどのような方向へ勉強を進めていくのかを考える上で、役に立つと思います。

以上、研究室の内輪話になってしまいましたが、参考までに、今日の構想発表会を見て思ったことを書いてみました(2004/7/24(土))。
by matsuura2005 | 2004-07-24 07:33
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